第172回
短編小説第172回です。
前回は「パイナップル」でしたので、しりとりでテーマを決めているこの短編小説。
次は、「る」で始まる言葉をテーマとします。
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戦争は治まる気配を見せず、泥沼にはまっていた。兵も国民も疲れ果て、資源はとうに尽きた。
火薬もないのに、戦わなければならない。両軍が行き着いたのは、水鉄砲だった。
しかし、それでも決着がつかない。むしろ長引きつつある。
単なる水ではなく、お茶を水鉄砲に詰めることにした。
これなら、なんらかの効果が出るはずだ。
両軍とも真剣だった。真剣であるがゆえに、どんなお茶ならば相手を打ちのめすことができるのか、試行錯誤を繰り返した。そして、ルイボス茶を選んだ。
結果は思わぬかたちで出た。
敵はだんだん美しく、若々しくなっていった。さわやかな気持ちになり、戦う意思が薄れていった。
戦争なんかするよりお茶を楽しんだ方が、人生有意義だと、そう考えたらしかった。
相手のいない水鉄砲など、むなしいだけだ。戦争は、終了を迎えた。
――長い年月が過ぎた。
二つの国は、すっかり平和になり、人々の記憶には戦争のことなど残っていなかった。
すべての国民が幸せになったわけではない。
一人の女の子が、カフェで沈んでいた。
彼氏が浮気しているみたいなの。彼女は友人にそう打ち明けた。
浮気の相手は、グラマラスな美人らしい。
かないそうにない。彼女は恋人に捨てられることを予想して、また落ち込んだ。
うつむく女の子の頬に、急に水がかけられた!
女の子はびっくりして顔を上げる。頬を吹くと、かけられた水はまだ温かく、ほんのりといい匂いがした。
ルイボス茶? どうして?
女の子は、あたりを見渡した。誰もいなかった。
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短編小説第172回、テーマ「ルイボスティー」でした。
しりとりとはいえ、なかなかとんでもないものをテーマに選んでしまったものです。
これが女性誌とかに掲載しなければならない話だったら、また違ったものを書いたんでしょうけど。