第162回

短編小説第162回目です。
この前は、「海(うみ)」でしたので、その続きで「み」で始まるワード。

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 同期の女性教師が、先に結婚してしまうそうだ――。
 勝又(カツマタ)は、婚期を逃している年齢ではなかったが、少し落ち込んでいた。
 そう言えば彼女には、不器用なところがかわいいと言わたことがあった。
「せんせー、ここ、イジョーに難しくない?」
 夕方になっても、この時期は毎日受験生たちの対応に追われていた。
 他の高校に比べて、担当の科学は成績が悪い。
 科学の魅力をうまく伝えられなかったから、というのは、よくわかっていた。
「檜山(ひやま)、もう一回参考書を読み直せ。時間がかかっても、それが一番実力がつくから」
「そうなんだよねー。でも全部となると、時間なくてさー」
 確かに今は、本当の学力を鍛えている時期じゃない。センターまで、1ヶ月を切っていた。
「科学オタクのせんせーとしては、こんなの簡単なの?」
「科学オタク……。さあ、でも、オタクだと、教えるのはヘタかもな」
 勝又は苦笑した。いつも白衣を身につけて、髪の毛もボサボサ、女子高で教鞭をとるには、色気のない自分だ。「でも、科学のことばっかり考えてるわけでもないさ。予備校よりもみんなを大事に思ってるよ。いい大学に入ってほしいし、科学も好きになってもらいたい」
「科学って、人気ないじゃん? みんな選択科目から外してのに、タダで教えてソンじゃないの?」
「少なくとも、檜山たちがいるから」
「そっかー。うん、先生はハクアイ主義者だね。……それって、モテないでしょ?」
「なんだそれは……」
 文脈はよくわからなかった。たが、檜山はうれしそうな顔をしていた。

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短編小説第162回、テーマ「魅力」でした。
みりきじゃないよ、みりょくだよ。


なんか、ベタベタに書いたつもりだったのに、よくわからない感じになっているなー……。


Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)