第151回 後編

短編小説第151回、後編となります。
まあ、お買い物の季節でもありますかね?

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 家電量販店に勤める吉原(ヨシハラ)は、在庫を探し回っていた。近隣店舗にてようやくあったと思ったら、店員達に取り囲まれた。
「私が商品を盗んでいる?」吉原は尋ねた。言葉の意味すらわからないくらい、びっくりした。
「この辺り一帯の店員を集めた。みんなが知らないと言っている。君の自作自演だ。そうだろう?」D店員が諭すように言う。
 その優しい口調に、吉原は根回しが入っていたことを悟った。A店やB店、D店はグル。C店やE店は、先回りで丸め込まれたのだろう。
「D店に商品があるというのは、嘘だったんですか」吉原は反撃に出ることにした。
「君をおびき出すための口実だよ」
 やはり商品は紛失していると言うことだ。それも故意に――。吉原は頭に血が上った。悪いのはどっちだ!
 しかし吉原は、別の喜びにほくそ笑んだ。「たまたま在庫を訊いてきた私に罪をかぶせようというわけですね」
「かぶせるのではない。もともと君の罪だ。えと……」
「吉原です。普段は全店舗の在庫管理をしています」
「え?……」暗い中でも、店員達に緊張が走ったのがわかった。
「最近在庫と売上がつり合わないとは思っていたんです」
「おおお、おい、しらばくれるなよ」
「そこで本店から配属された調査チームが、網目状にちらばり、罠を仕掛けていました」
 吉原を陥れようとしていた全員が押し黙った。図星だった。
「残念ですね。我々の網の方が大きかったというわけです」
 吉原は慎重に犯人達に語った。逆上して逃げられるわけにはいかない。網の下から、そっと採取の手を伸ばしていった。

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短編小説第151回、テーマ「ネット」でした。
基本的には、大きい方がいいですね。