第151回 前編

短編小説第151回、三連休ということもありますので(?)前後編の2回になります。
楽しんでいただければ……。

                                                                                          • -


 とある大型家電量販店で働いている吉原(ヨシハラ)は、お客様が探している商品の在庫を探していた。
 売り場には値段が出ているが、商品がない。バックヤードにも在庫がなかったため、近隣の店舗に電話をかけた。
 お客様には申し訳ないが、歩いて五分の所に複数の店舗がある。そこに出向いてもらうつもりでいた。
「うーん、すまないねぇ」吉原はまず一番近いA店に電話をかけた。しかし、A店にも在庫がないとのことだった。
「B店は、どうだい? 私、C店に電話をかけてあげるよ」
 C店は、お願いすることにした。吉原はB店にも電話をかける。
「あるわけねえよ、この時期に」しかしB店にもなかった。「しょーがねーな、D店にはねーのか? E店には俺から聞いてやるよ」
 やはりこの会社は、強いつながり、ネットワークがある。吉原は感謝しつつ、急いでD店に問い合わせた。
 果たして、D店からは快い返事がもらえた。
「しかしそこからだと、ウチのD店は一番遠いね。もうずいぶんお客様を待たせてあるんだろう。君が走って取りに来なさい」
 ようやく見つかった。吉原は、息を切らしてD店へ走った。呼び出された倉庫の扉を開ける。
 明かりが一つもない真っ暗闇だった。
「そこに座りなさい」D店係員の声だった。他にも近隣店舗の店員――在庫問い合わせの対応をしてくれた人間の気配があった。
「みなさん、おそろいでどうしたんですか?」目が慣れてくるのを待って、吉原はそこにあった椅子に座った。「早くお客様に商品を届けないと……」
「そのことについてちょっと聞きたい」暗闇からの声は、吉原を遮った。「君、商品を盗んでいるだろう?」

                                                                                          • -


短編小説第151回、まずは前編でした。
後編につづきます。