第149回

短編小説第149回になります。
この話は、フィクションですからね。

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 ここは都内某所のとあるイベント会場。すべての女の子の憧れ、ミカちゃん人形の生誕三十周年祝賀会が催されていた。
「もしもし、私ミカちゃん。今日は誕生日にたくさんの方が来てくれてうれしいなー」
「ミカちゃん、今年で三十路の仲間入りですね」
「結婚のご予定とかは?」
 取材陣からは、たくさんの質問がとぶ。アイドルへの敬意を払ってくれるマスコミも年々少なくなってきていた。
「えー、まだ十二歳の設定なんだし、独りでもいいかなー」
「高齢出産は怖くありませんか?」
「ケンタ君とヨリを戻すことは考えてないんですかー?」
 この年を節目に、ミカちゃんをワイドショーの餌食にしたいのだろう。忌憚なさすぎる質問に、スタッフの顔はだんだんと青ざめてきた。
「実は、俺も今年で四十だが、この通り独身だ」
 かばうように間に入ってきたのは、子猫のキャラクタ、『キティガイ』だった。
「つか、結婚どころか猫ならもう寿命だろって感じだよな」
のり太くん、僕も独身です」
 誰かがまたミカちゃんをガードした。未来の世界のタヌキ型ロボット『ふぇろモン』だった。
「メスタヌキを追いかけるようなスケベ設定なのに、五十歳の今年も放置プレーです」
「子猫ちゃん扱いもいい加減にしろってんだ」
「清純派は二十歳までだよねー」
 ミカちゃんとキティガイも同調する。
「どうしてこうなった?」キャラクタ達の視線は、プロダクションの社長に集まった。
「うん、そうだな……」社長は頷いた。「自分の歳も間違えているようじゃ、確かにもう子供キャラは無理かもしれん」

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短編小説小説第149回、テーマ「歳」でした。

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