「夏の」ではなく、「夏休みの」がしっくりくる 湯本 香樹実『夏の庭』

夏の庭―The Friends (新潮文庫)
湯本 香樹実
新潮社
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小学6年生の仲良し男子3人組が、死にそうになっているように見えた「おじいさん」と交流していく物語。


タイトルで言った「夏休みの……の方がよいのでは?」というのは、もちろんこの物語におけるメインの季節が夏、と言っても夏休みの時期だから、というのもあるが、夏の暑さや熱を感じさせるような記述は少なく、子供たちの解放された、という意味での自由さが、むしろ「夏休み」というワードに合うような気がしたからだ。


Amazonや2ちゃんではかなり絶賛のこの本だが、正直に言うと大感動!悲しい!と一様に受け取るものでもないと思う。
子供とおじいさん、というようにこの物語の面白さは、対比とそれに伴なう【時間の経過】そして、有限の時間を感じることにあるのだ。
前述した「夏休み感」も区切られた時間を感じさせるよう、筆者の意図的な部分が多々見受けられた。


やがて咲くであろう秋桜は、そのひとつ。
そして庭、は限られた空間。
そこに若さと老いを閉じ込めることによる、人間の一生を時間という軸で描いた物語。
結構アートな本じゃないのかな。


★★★☆☆