第128回

短編小説第128回となります。
年内に130回まで、アップしておこうと思います。

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 二十一世紀の初頭、少子高齢化に苦しむ国のこと。とある地方に、人間製造器なるあだ名の女性がいることがわかった。
 当時、女性が出産した子供の数は、百八人。その全員が、健康優良児としてすくすくと育っているという。当然成人し、社会で活躍する子供も多かった。
 マスコミはこぞって女性の特集を組み、人間製造器なんてあだ名は、人権を無視している、との議論もわき起こった。些細なことがきっかけとなり、彼女を神格化する動きにつながった。
 大学をはじめとする各研究機関は、科学的な見地から彼女を調査したいとオファーを出した。しかし現代に生きる女性の正しいあり方として彼女をプロパガンダに使いたい政府は、頑なに彼女をガードした。マスコミは研究機関側についた。
 埒があかなくなった頃、彼女自身が出産の多さと健康の秘訣を語った。米と小麦中心の食事を心がける――。シンプルな答えに、世界中がひっくり返った。
 世間を煙に巻こうとしているのだろう。彼女には、多くの非難が集まったが、意見を変えることはなかった。
「主食はもっとも大切なエネルギィ源です。今や穀物で車だって動かせる時代ですよ」
 そう言った彼女が、まさに機械だったことが判明した。世界はまた驚き、すぐに呆れかえった。
 見切りをつけつつある世界に対し、政府は国の活力がまだ健在だという見栄を張りたかったのだろう。彼女は、嘲笑と皮肉の混じった過去となった。
 その後、人権的な問題から、彼女の子供は、その正体を明かされることなく一生を過ごすことができた。つまり、人間として生きることができた。その子供もまた……。
 最近多いニックネームの一つに、人間製造器というものがあるという。

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短編小説第128回「クリエイト」でした。