第127回

短編小説第127回となります。
人の作品をけなしておいて、すぐに自分のを載せるとは、たいした度胸です。

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 ドライブ好きの奈美(ナミ)は、とにかくカーナビがほしかった。多少性能が悪くても、よくわからないし、どうでもよかった。雀の涙ほどのボーナスが支給されると真っ先にカー用品店にダッシュ。無事カーナビを購入した。車は学生時代に親から買ってもらった年代物だが、これでもう一度ポテンシャルが引き出されたような気がした。
「ナビゲートしてくれるだけでいいもの。これで十分!」
 カーナビを載せたドライブは、思った以上に面白かった。最近は、各地方の方言にあわせた音声案内があると聞いていたが、有名人の人格までシミュレートしているとは。
 奈美は、もう少し機械について情報収集しようと思った。
「行けばわかるさ。歩みを止めたときに、成長も止まる」
 面白さの一つが、説教臭さだった。最近の機械は本当に良くできている。音声操作と組み合わせることによって、会話が成り立った。
「次はどっちに行ったらいい?」
「迷ってみるのも人生。行けばわかるさ」
「道がなくなりそうなんだけど?」
「君の歩んできた後に、道ができるんだ」
 そして時折勉強になる。ナビは誰も教えてくれないことを、率先して教えてくれた。
 最近浪費ぎみなのも、ストレスがたまっていたからかもしれない。もっと、自分に気を遣おう――!
「今日は遠くまでドライブに行こうかな。○■岬までのルートをお願い」
「踏み出せば、その一歩が道になる」
「それ、もういいから」
「道はどんなに険しくとも」
「その道を教えろってんの」
 ナビは反応しない。道順を教えてくれるつもりはなさそうだった。
 しまった、こいつは不良品だ――。奈美は、もう少し機械を勉強しようと思った。

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短編小説第127回、テーマ「無頓着」でした。

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