第123回
短編小説、第123回となります。
ひさびさです。
間が空くときは、それでも書いていていたのですが、このところ書いていませんでした。
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「坂上(さかがみ)先生、これ、落ちましたけど」
職員室の自席に戻ると、出席簿からすり落ちた手紙を同僚の教師が拾ってくれた。かわいらしい柄の便せんだった。
「これ、ラブレターじゃないんですか?」
「え? そうですかね」
「あらー、先生も隅に置けませんねぇ。おほほほ」
若い女性教師が冷やかしにはいる。坂上は恥ずかしいやら、照れくさいやら、こそばゆい気持ちになったが、うれしくはなかった。
差出人が、同年代の女性からであれば、少しは喜ばしくもあっただろう。手紙をよこしたのは、つまり、坂上が受け持つ生徒だった。また穏便なお断りに心を砕かねばならない。
「しかし、最近の子供にも、困ったもんですな」ベテランの教師が、話に加わってきた。「この子は、何年生でしたっけ?」
「五年生です」
「私が五年生の頃は、家の手伝いで精一杯だった。それが今では、恋愛ごっこです」
「すみません。ウチのクラスの生徒が……」
「先生が謝ることはないですよ、これも時代です。まったく、豊かになった分、大切なことを見落としているのかもしれませんふぁ?」
喋っている途中で、ベテラン教師の入れ歯が外れた。職員室に喝采が起きる。……が、あまり大声で笑う元気もない様子だった。
「そうでふか、ごねんふぇいでふか……」ベテラン教師は入れ歯をはめ直して話を続けた。
「それに、私が子供の頃は、もっと体も小さかったような気がするんでしゅが、どうでしたかねえ」
坂上は頷いた。「ええ、最近の子供は、五年生……40歳になっても、恋愛ごっこです」
「顔つきも、もっと幼かっただったような気もするんじゃが」
ベテラン教師は、杖を付きながら自分の席に戻っていった。
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短編小説第123回、テーマ「子供」でした。