第99回

短編小説第99回です。
うーん、99回。
はてなに移しきってないものがあるから、
なんかそんな感じはしないのだけど。

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 中世後期のイタリアのお話しです。
 少年は行商を生業としていましたが、まだ駆け出しで、馬を飼う金がありませんでした。
 自らの足で、近場の街を渡る。当然大きな商談は扱えません。わずかばかりの利益を爪を研ぐように貯め、まずは立派な馬車を、そしていつかは自分の店を持つことを夢見ていました。
 しかし、商売に困難はつきものです。
 いつものように街へと向かっていると、なんと橋が崩れ落ちていました。
「このままでは、納期に間に合わない……!」
 少年は焦ります。違う橋まで回り道をしている時間はありません。そして、崖の幅は、頑張ってジャンプすれば、渡りきれるようにも見えました。
 しかし失敗すれば、命を落とすような高さです。
 やるしかない。どのみち、期限に間に合わなければ、商人として生きていくことはできない。少年は覚悟を決めてジャンプしました。
 ――その時です。
 強い向かい風が吹いて、少年の体を押します。ジャンプしたはずの少年は、元いた場所に戻っていました。
 顔を上げると、崖の向こう岸は崩れ、さらに大きな溝となっていました。再度ジャンプしても、届きそうにありません。少年は、泣きながらに祈りました。
「おお、神よ、私から商売を取り上げるのですか!」
 少年が向かうはずだった街は、その日、大きな火事に遭ったそうです。
「……という、なんとも不思議なお話を表現しているんですよ、この気まぐれサラダは」
 カウンタには、なじみの客がいた。シェフは、苦心の末にようやく考え出した新しいメニューを披露する。客はシェフの話を聞き終えると、頷いてこう言った。「いや、腹減ってるから、ボリュームがあるのを頼む」

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短編小説第99回、テーマ「気まぐれ」でした。
次は100回目なので、増量して400字詰め原稿用紙4枚分の文章量で生きたいと思います。
が、ちょっと間を起きます。
せめて、今までのものでこっちに移してないものを、移植しなくては。