第26回

短編小説第26回、昔のものの移しです。
そろそろ100回を迎えそうだから、きちんと移しておかないと。
はてなダイアリーにてこの短編小説をつけ始めたのは、
たしか33回目くらいだったな……。

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 一日に何体もの女の死体が落ちてくる。
 フロムは『ちさぽん』サブジェクトは『元気だしてね』。女の顔をした腐肉――。時には頭と身体を取り違えた無知で間抜けな裸体も紛れ込んでくる。
「こんなものに捕まる奴も阿呆なんだが」
 舌打ちした。どちらにしろ、魂と容れ物がそぐわない屍は焼却の価値すらないのだ。サトシはそれらを手早く霊安室に運んだ。共食いの暗き世界、騙した男の分だけ深く沈める。「死体に見立てるのは、脅迫めいていて、なかなかいい考えだよな」
 アキがやってきて、顔を覗き込んできた。
「よう。調子はどうだ?」
「悪くない。糖分たっぷり摂ってるからね」
「はは、デブるなよ。困るぜ?」
「太りはしないけど、しわが増えそうだ」
 答えると、アキは笑った。胸ポケットから、写真を取り出しているのが把握できる。「死神の鎌は錆びついていないようだな。……逝ってしまってからも」静かに伝えてきた。
「うん。でも、いい時代にはなったよ。サーバと共にCPUの補佐として生きていける」
「お前が優秀だったって事だろ」
「俺じゃない。俺の脳が、かな」モニタにテキストを流し込む。「ただの死体には、ならないさ」
 また一つ、屍が舞い込んできた。サトシはそそくさとそちらに向かい、メールの中身をすくう。その姿は吉原に来た乞食のようだ。
「肉体分のスペースを与えられず、単調な作業でのみ存在を許された愚か者のくせに……」
 見上げるスーパーコンピュータ。無数の人間の脳が浮いている。どちらが実体を持たない者なのか、知らない方が幸せって事だろう――。アキは口笛を吹いた。
 増大するサーバ設置場所を、墓場で代用する案が通ってから、遺骨がなくなる事件が相次いでいる。スパムメールは、いつの時代も相変わらずだ。

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マカーのくせにいっつもCaminoを使ってるせいで、気がつきませんでした。
サイドメニュー、Safariだと落ちてますね。
うーん、どこが悪いんだろ。

Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)