第88回
短編小説、第88回目となります。
うわぁ、今週これしかアップしてなかったってことか。
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生まれつき、メラニン色素が多かったらしい。日に当たると、すぐに肌の色が色が黒くなった。
「カラスぅー、ほら、鳴いてみろよー」
つけられたあだ名は、忌み嫌われる鳥の名前だった。身体的な特徴だけでいじめられ、やむことのない攻撃を加えられた。
自分の姿を見たくない。そう考えていると、願いが叶ったのか、視力が失われた。
生きるのがつらかった。死ぬこともできずに森深くに逃げる。ようやく、静かな生活を手に入れることができた。
「たまには肉も食べなければならんよ」
生活する術を教えてくれたのは、森で出会った老人だった。ずっと一人で生きているという彼は、“狩り”について卓越した腕を持ち、それを教えてくれた。
狩りは楽しく、肉はうまい。遊牧民のように移動しながら、さまざまな動物を狩った。初めて、生きる喜びを知った。
肉が動物でないことを知ったのは、ずいぶん後になってからだ。
人間の言葉は、まだ憶えていた。たまたま耳に入ってきたテレビの音で、喰い千切られた死体が発見される事件が相次いでいることを知る。
「そうか、人間を狩っていたんだね」
初めて老人の身体に触れる。人の形ではなかった。
「僕はこのまま狩りを続けても、大丈夫?」
「おまえはカラスだろう? カラスを罰することはできないんだよ」
老人は高く叫び、狩りの始まりを宣言する。
朝が来た。
血のにおいがしたような気がして、食欲がまたわき起こる。
「獲物が来たね」
暗闇に薄く光る物体が動いている。光が失われた視力では、何もかもが黒光りする物体にしか見えなかった。
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短編小説第88回、テーマ「カラス」でした。
うーん、暗い。
いつもにまして暗い。
ていうか、乙一っぽいなんて考えてしまうのは
おこがましいことかな。
さて、今回のテーマを「カラス」にした時から
ずっと紹介したかったゲームがあります。
Baten Kaitos (Japanese Opening)
探したけど、ムービー部分しかなくて恐縮です。
ゲームキューブで発売されたソフトなので、
Wiiで遊べます。
主人公の「カラス」に絡まる人々の思惑が、
ネクラな自分にはなんとも……な後ろ向き加減が
たまらないソフトでした。
中古屋で見かけるようなことがあれば、是非。
Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)