手に入れたいものを見定める 垣根涼介『サウダージ』

サウダージ (文春文庫)
垣根 涼介
文藝春秋
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暴力、セックスといった、いわゆるバイオレンスな世界に済む二人の男を主軸に、わりと素直に時系列を進めていく物語。


この二人、一人はヤクザ(?なのか、いまいち組織の全体像がわからなかったが、そういった組織)の若手、もう一人は金儲けを企むチンピラと一見その世界観そのもののような、似た特徴なくせに、性格だけははっきり違っている。


一人は、実は物静かで優しく、一人はそのまま激しくひどい。


そしてまた似たようなキャラ立てを付け加えられている。


二人とも大事な人間がそこにいるのに、自分がそう思っていることに、気づかないふりをしている。
二人とも、今の自分から脱出しようとして、もがいている。


気づいていないわけではないから、自分としてもその気持ちを言葉にしたり、否定したりしながら、サウダージという言葉の意味の郷愁ではなく、明日を探そうとして、そして自分をはっきりさせようとする、バイオレンスな設定とは裏腹に、なんとなくほっとする、そんなお話だった。


★★★★☆