変えられない未来を強く生きる 重松清『流星ワゴン』
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/02/15
- メディア: 文庫
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これが、大正解だった。
いつもの通りネタバレにならないようにこの『流星ワゴン』を説明してみると、
死のうと思っていた男が死んだはずの親子が乗るオデッセイ(つまりこれがワゴン)に拾われるところから、メインのストーリィが始まる。
ワゴンは現実とは違う時空間を旅していて、死にそうな人の前に現れ、その人の大切だった人生の場面、場面……つまり過去をやり直しさせるのだ。
この「過去をやり直しさせる」というのが、この物語の重要なポイントになってくる。
過去をやり直しできる、ということは、誰もが人生をやり直すことができると想像してしまうだろう。
しかし、そうそう甘い世界ではない。
ワゴンに乗った人は、過去をやり直しさせられるだけ、なのだ。
やり直しした結果が、未来に向かうわけではない。
「現在」はもう起きてしまっているから、過去をどうやり直そうが「未来」は変えられないのだ。
ちょっとわかりにくいかもしれないけど、ワゴンの乗客は「過去をやり直す」だけで、同じ結果に向かう過程――すでにわかっていることを、やり直しする。
リピートするだけなのだ。
なぜ、そんな意味のない、つらいリピートさせるのか?
なぜなら、その人にとって、「現在」を作る大きな分岐点となった大切な場面だったからだ。
その後悔を、改めて噛みしめさせられる。
これが死のうと思っていた男にどう影響してくるのか――。
父親であり夫であるこの男(主人公:永田)の情けなさ……しかしやるせなさをこうも描ききったのは、重松先生、本当にお見事。
まっすぐでポジティブな生きるための希望……ではなく、悔しくて、辛くて、それだからこそ生きていくそんなリアルな「やるしかないんだ」感。
すばらしい一冊だった。
★★★★★