第138回
短編小説第138回となります。
なんだかペースが遅れているような。
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時刻は●時三十分をまわりました。●時のニュースをお伝えします。
日本を訪問中のS国アラサッサ大統領は、滞在最終日となる昨夜未明、T県の回転寿司店を電撃訪問。店内は一時騒然となりました。
T県名産のアラカブと日本の大衆文化である回転寿司を一気に味わいたかったというアラサッサ大統領。期待通りの雰囲気におおはしゃぎ。招待した鷹山首相にその感激を伝えます。
しかしそこからが大変。
回転寿司のレーンに慣れていない大統領。なかなかお皿を取ることができません。うまく狙いを付けますがー? ……なんと、隣席のお客に奪われてしまいます。これには店内大爆笑。アラサッサ大統領も苦笑い。
これでムキになったのか、見るに見かねた鷹山首相がお皿を取ってあげようとしますが、大統領はこれを頑なに拒否します。あくまで自力で取りたいご様子。
何度もお皿取りに挑戦した大統領。結局一貫もお寿司を食べることはできませんでした。
「短い滞在だったけど、いい思い出ができたよ。回転寿司はタイミングが大事なんだね。アラカブという魚が食べ頃、と聞いていたんで、是非食べてみたかったんだが、残念だよ」
日本とS国との関係について尋ねられると――?
「今が食べ頃だね」とニヤリ。独特のジョークを交えて日本を後にしたアラサッサ大統領。貿易摩擦からぎくしゃくしていた日本とS国の外交関係も、これで一気に修復できたのではないでしょうか。
続きまして……あ、速報です。
ただ今入りましたニュースによりますと、東証上場全企業の株が、何者かによって買い占められているようです。大規模な仕手戦か、日本国自体の敵対的買収と見られています。
昨夜料理店から急遽病院に運ばれた鷹山首相との関連は、まだわかっていません。
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短編小説第138回、テーマ「食べ頃」でした。
タカとかハトとか、あまり詮索しないでください。
また、この記述の中に「急遽病院に運ばれた」とあります。
プロ野球チーム、広島・巨人で活躍された木村拓也コーチのご冥福を祈ります。
Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)