納得はできかねる! ような…… 支倉凍砂『狼と香辛料V』

狼と香辛料〈5〉 (電撃文庫)
支倉 凍砂
メディアワークス
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「V」は、「5」と読んでください。機種依存による文字化けしないようにってことで。


さて、狼と香辛料と五巻目まで読み進めてしまって、そろそろローテーションから外さないと、読むのと刊行されるペースが縮まってきてしまっているぞ、ということなんだけど、五巻目にして、変な感想に唸ってしまった。


ちなみにこの「読書」カテゴリ、書評ではなく、読書感想文です。
星付けてるけど評価するために読んでるんじゃない。小説は、楽しむもんだ。


さあ、余談はさておき。今回もネタバレ全開ということで。

ロレンス、ホロを質草に入れちゃいます。Σ(゚Д゚)


狼と香辛料シリーズを未読の方に説明すると、
ロレンスは、若手でかつ聡明な行商人。
ホロは、豊作を司る狼の化身(時折神扱い)。果てしない時を生きた賢狼。
だったりします。


何百年も前にあとにした故郷へと帰りたい、と言うホロの願いを叶えるため、ロレンスは北へと商路を変更する旅に出たのですが、クラスに一人はいるおせっかいな女子風に言うと、「あんたたちってさあ、告白してないだけで、お互い好き合ってるんでしょー?」という状況にあります。


今回直面したのは、そのホロを貴族の娘として質草に入れることで、大金を借りる、そしてその金でとてつもない儲けを出す……というものです。
付け加えるならば、ホロは狼の姿に戻ることができ、その大きさは、荷台を含めた馬車ほどあります。
なので、万が一の時に肉体的な危機(普段はかわいらしい少女の姿)に陥っても、その牙で簡単に切り抜けられることができます。


ロレンスは商人として自分の店を出す、という夢があり、ホロはそれをかなえてやりたい。
ロレンスとしては、万が一のばくちも打てる、ホロに釣り合うような男になりたい。
二人の想いは、妻のきれいな髪に似合う髪飾りを買うために銀時計を売ってしまう夫と夫が付けている銀時計に合う(略)のように、からまわり、かみ合いません。狼だけに。(あ、言っちゃった)


だから、ロレンスはホロを質草にいれてしまって、こんな風に私を悶々とさせたわけです。


しかも、二人には杞憂とも言うべき恐怖がありました。


「この楽しい時間(旅)もいつか終わりが来る。だったら、今……」


なんか、よくわかるような気がするんですね、この気持ち。
私なんぞの人生経験で言うべきことじゃないかもしれないけど、歳をとればとるほど、この手のネガティブな思考は頭をもたげるもの。
たとえ、そのときどれだけ幸せであっても。


ホロは数百年以上を生きてきた存在だから、ゴールできない恋の寂しさを痛感しているのでしょう。


ロレンス「お前でも、(幸せな結末を迎える)物語を知らないのか?」
(すんません、うろ覚え)


二人の行動は自虐的でもあり、試練を乗り越えようとする気概に満ちているようでもあります。
ただ、この行動が、二人をどう導くのか。
なんとも気になる形で読了した『狼と香辛料V』でした。