第102回

短編小説第102回です。
いや、ホントに更新のタイミングが整ってないな。
いつか、この短編小説を目当てにやってきてくれる人が出てきますように。

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 放課後、友達とかくれんぼをして教室の後ろにある掃除用具入れに入った翔太(しょうた)は、待ちくたびれて居眠りをした。目を覚ますと、誰もいない真っ暗な教室で誰かがひそひそと声を立てていた。
 先生だ――。翔太は身をこわばらせた。今何時だろう。こんな時間まで学校に残っている自分を、先生はきっと叱りつけるだろう。恐ろしくて出て行くことができない。じっとしていると、先生が何かを抱えているのがわかった。
 自分と同い年くらいの女の子ではないだろうか。先生はそれに囁くような声をかけ、身体を押し付けていた。
 先生は何をしているのだろう。よいことには見えない。だけど、大人のやっていることだ。自分にはわからない事情があるのだろう。ましてや先生だ。悪いことをするわけがない。……なのに、怖くて、気持ち悪くて仕方がなかった。
 翔太は、震えながら、ただ時間が過ぎるのを待った。すると、急にむずむずしてきて、大きなくしゃみが出た。
「誰だ!」先生の声が教室を切り裂く。まっすぐ掃除用具入れに向かってきた。出て行こうか、躊躇する時間もない。
「お前、見ていたな!」血走った目のまま、先生は戸を開けた。
 もうだめだ――。翔太は目をつむる。勢い良く戸が開けられると、一緒にほうきやバケツが飛び出した。そして先生に直撃した。
 頭を打って気絶する先生。翔太は胸をなで下ろしながら、掃除用具入れを出た。そう言えば、あの女の子はどうなったのだろう。先生がいた場所をのぞき込む。
 そこには、人形が一体あった。きらきら長い髪の毛を持った女の子の人形。外国のものだろう。背丈は自分くらいある。とても大きい。人形の瞳は大きく開かれていて、焦点があっていなかった。

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短編小説第102回、テーマ「だるま」でした。


さて、今回はどんな風に受け取られるか。


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