作者が一番純粋だった。 有川浩『空の中』


図書館シリーズで、一番と言っていいくらい人気作家の有川浩さんだが、文庫派の私にとっては、まだまだ遠い存在だった。
それこそ空の中ほど……図書館シリーズの文庫化はまだかね? と思っていたところ……目黒アトレの有隣堂の中にこの『空の中』があった。
(ちなみにこれ、『自衛隊三部作』なのね)


読み始めて気が付くのが、その下調べの丁寧さ。もともと自衛隊、というか軍隊がお好きなのか、飛行機やその操縦などの記述、その場にいる人達の立ち位置、セリフ回しにすごいリアリティがあるのだけど、それ以外にも世の中のいろいろな事象をあらゆる側面から調べ、プロットに絡めているのがわかる。
恋愛面に関してはあま〜い物語を書く人としても知れ渡っているけど、純粋なのは、作者なのだ。
納得いくまでとことん調べる、書き込む。
だから、こんなにも骨太のストーリィができるのだ。


さて、内容の方は、高度二万メートルの上空になぞの巨大生命体を発見するところからはじまる。
それは巨大という言葉も当てはまらないくらい。面積で言えば一つの行政区分がまるまる入ってしまうほどの大きさだった。
偶然にもそのかけらを拾って育ててしまった少年と、謎を追いかけるうちにその生命体にたどり着いた自衛隊、航空会社の青年達の2つの側面から、展開される。


知性を急激に吸収していき、圧倒的な戦闘力を持つその生命体に対しての、友情と誠実さが絡み合ったストーリィは、まさに王道。
書き込みの細かさもあり、大納得の一冊だった。


★★★★☆