呼ばれて飛び出て短編小説

リアル友人もブログをつけているわけですが、
いよいよ節目の年を迎えたこともあり、
リクエストをいただきました。
今回はそれで行ってみようかと思います。

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 日曜。十一時を過ぎて、ようやくテレビから離れる勇気が出た。遅め朝食と早めの昼飯を安食堂に任せる。若白髪のスーツがカウンタを陣取っていた。
「パソコンの使い方も知らない奴が部長になって、社内は大混乱さ」
 砂肝を噛んで、ハードボイルドを気取る彼は、終電が男の定時と嘯く。
 島耕作も女と寝る時間は取ってるよ?
「漫画を読む暇もないのよ、きっと」
 女房が笑った。カツカレーがうまかった。
 水曜。三度目の催促で、しかたなく国に従った。区役所帰りの都バス。左手で口紅の女が、右手の携帯電話に訓戒を垂れていた。
「結婚に逃げるような女に、なりたくないわけ」
 結婚式用十二回ローンのドレスは、頑張った自分へのご褒美らしい。
 そのうち亭主を改造する趣味に変わります。
「この前の人といい、誰かさんにそっくりじゃない?」
 女房が耳打ちした。車内に神経科の広告が流れた。
「さあ、いったい誰のことかな」
 バスがゲームセンタを通り過ぎる。クラシカルな型のクレーンゲームが映った。懐かしさに目を奪われた。
「UFOドリーマーだ。今でも置いてあったのか」
 中学の頃受験も忘れて熱中した。二千円もかけた青いハリネズミが誇りだった。
 あの頃の倍の歳になる。半年前から先読みしていた誕生日。次の日曜に、また一つ年輪を重ねる。
「俺は、”俺たち“をまとめられるのかな」
「しっかりしてね。課長さん」
 夕方になると、女房と一緒にスーパマーケットに向かった。
 六缶で五百円の発泡酒で、祝杯を挙げる。
 ささやかな日常を、日々の激闘に感謝した。

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もらったお題は、

  • 30代
  • 中年
  • 思い出
  • これから
  • ターニングポイント

のいずれかから、でしたが、
せっかくだからこれらが混ざり合った物語にしてみようかと思い、
こんな感じです。
タイトルは「休日」にでもしておくか。



なんつーか、ギルバート・オサリバンの曲の歌詞のように、ね。