2007ネット界最大トピックス

大学時代のSNSに書き込んだ文章なのだけど、
こっちの方が、読んでくれる人の興味のあるものかもしれないので、転載。


今年におけるネット界隈最大のトピックス。
それはニコニコ動画……ではなくて、
初音ミク』ではないだろうか。


クリプトン | VOCALOID2特集


はいそこ、オタクって言わない。キモイって言わない。


まあ、まずは初音ミクって知らない人に説明すると、
初音ミクはいわゆるソフト音源(音声)。
簡単に言うと、パソコン上に入力した歌詞を歌い上げてくれる。
MacOSやWndowsに搭載されているスピーチ機能、
英文読み上げを行ってくれる機能に近い物と思ってくれればいいと思う。


ただ、OS純正の英文読み上げとは品質がまったく違う。
このソフトは音の高低や長く伸ばすところ、
スタッカート気味に切るところを細かく調整し、
本当に人間が歌ってくれるように曲を仕上げることができるのだ。
それはもう、曲作りを趣味にしている人々が、一気に飛びついた。
バンドメンバがいなくても、自分の歌がへたくそでも
かわいらしいボーカルが入れられるんだもん。


いや、それネットじゃなくてソフトじゃんって思うでしょう。
確かにこれはローカルマシンにインストールするアプリケーション。
ネット越しにうんちゃらかんちゃらはない。


だが、こんなソフトが「今」に現れたから、さあ大変。
なんせ「Youtube」や「ニコニコ動画」があるから、
「発表しても、アクセスがないから反応がない」って事態に陥らないし、
発表する側がボーカルを初音ミクで統一するという
「基準」を設けることによって、聞く側にも変化があったのだ


どんな変化か?
たとえば友達に「このインディーズバンドすごくいいから、
聞いてみなよ」って、言われても、結構壁があると思う。
聞けば感動する曲もあるんだろうけど、聞くまでの敷居が高い。
また、認めるまでがさらに高い壁がある。


俺は違う? おまえはさもしい?
でもこれが現実だった。
自分の(自分の所属するバンドの)ボーカルで
曲をアップしたって、誰も見向きはしない。聞きはしなかった。
現実の世界同様、日本のネット、2ちゃん界隈って、結構保守的。
どこの馬の骨ともわからない奴の作品には誰も耳を貸そうとはしなかった。
ましてや、上手かどうかもわからないボーカルには、なおさらだ。


初音ミクは、そこを変えてくれたのだ。
作曲は僕(ネット上の才能ある誰か)だけど、
ボーカルはミクだから、いいでしょ? と。


これは衝撃的だった。
これまで見向きもされなかった自作音楽が、
「聞く気にもなれない」から「ミクなら、聞いてもいいよ」になったのだ。
その結果、プロ顔負けの楽曲が「正当」に評価の場にあがることになった。
ニコニコ動画上には、数多くの名曲、たくさんの名コンポーザが生まれた。


今までだって評価される土壌がなかったわけじゃない。
ネット空間は基本的には平等で、
プロだろうが、アマチュアだろうが一律に並べられる。
だが悲しいかな、我々はある程度評価を得ている物にしか目を向けない。
結果、ネットといえども、(インディーズで人気を博している少数バンドをのぞけば)
プロ以外が、存在を確立しているとは言い難かった。


私が感じた今年の大きなうねりは、消されていた平等が、
仮面をかぶることによって、復活したことなのだ。
初音ミクという「平等」をかぶることによって、
アマチュアミュージシャンは、ようやく日の目を見ることになった。
ネット上に舞い戻ってきた。


もちろん、評価されるために「Youtube」や「ニコニコ動画」といった
「場」がすでにできあがっていたから……というのは、言うまでもない。
一見後ろ向きでも徐々に進んでいる部分がある。
来年は何が出てくるかな。