第76回

短篇小説第76回目です。
最近、ことごとく忙しくて、
なかなか小説に関わる時間がありませんでした。
ちょっと時間が空きましたが、ご勘弁を。

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「うわ、警察沙汰になってる……」
「殺人事件として捜査開始みたい。ふぁあ」
 一見すると、猫と女子中学生。平和な感じではある。しかし紀美(のりみ)はこの状況が未だに信じられなかった。
 のんびりと欠伸をするこの猫。死神だというのだ。
 あそこで死んでいる女子生徒が自分らしい。……まあ確かにべっぴんさんかも。
「警部、出席簿を借りてきました」たくさんのパトカーに騒然となっていた。
「ああ、ごくろう。容疑者のイニシャルは、S.Kか……。結構いるな」
「このクラスだけで、三人です」
「S.Kって?」猫死神が尋ねる。紀美は死んでいるのに、卒倒しそうになった。
「待って。そのイニシャル、違うの!」
 手を伸ばして、必死に警察を呼ぶ。しかし死人の声は届かなかった。
「ダイイングメッセージに、犯人の名前を書いたと思われているみたいだね」
「ガッテム……!」
 情けない理由の他界だった。好きな人の名前を傷としてつけると、両想いになれるというおまじない。深く傷つけすぎて、出血多量になってしまったのだ。
「君オタクだから、現実の男に興味があるなんて思われなかったんだよ」
「やかましいわ! ……どうしよう、このままだとあの人に迷惑がかかっちゃう」
「警察が上げた容疑者リストの中に、君の好きな人はいたの?」
「いない。でも、時間の問題よ」
「ちなみに誰? クドウシンイチ?」
「黒井、先生……」
 死神は唖然とする。中学生は時折馬鹿な死に方をするとは聞いていたが――。
 引き継ぎの仲間に申し訳ない。せめて要注意人物ということだけ知らせておこう。顧客リストの紀美の名前、蛍光ペンでなぞった。

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短篇小説第76回、テーマ「リスト」でした。
せっかく借りてきた写真ですが、色が飛んでしまっていて、
グレースケールに変換しました……。
GIMPでグレースケール変換って、「脱色」って言うのね。
昔の髪の毛染める儀式みたいだわ。

Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)