第15回

短編小説、昔のものの移しです。
一番できが良くなかった頃のものだから、
あんまり読んでいただくのもどうかと思うのですが……。
ちなみに前回「13回」で掲載したものは、「14回」だったみたいです。
あまりにもひどくて13回は書いたけど、なかったことにしたんだった。

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「おい、てめー! 水量が強すぎんぞ?」
 兎が怒鳴ると、「すみません……」と、弱々しい鯨の声が聞こえた。
 太平洋に浮かぶ小さな島カントー。饅頭ほどにしか見えない小さな動物のために、巨体はいつもシャワーを注ぐ。そして文句を言われるのだ。
「秩序を乱しやがって。許さん」
 さすがに見かねた獅子が、遠くから竜を伴って戦いを挑む。しかし、返り討ちに遭うこととなった。
「なぜだ? なぜ、悪がこんなに強いんだ」
 鯉が唸る。今年は丸焼きの刑だ。
「バカめ。俺はお前らとはまったく違う力を持っているのだ。お前らでは手に入れることができないパワーをな!」
 兎の体は、暗くてじめじめとした得体のしれないもので覆われている。長年の独裁で高く渦巻いたこれが、強さの源なのだ。十一の生命はあきらめる他なかった。
 そんな中、ついに犠牲者があらわれた。死にきれない彼の魂は、夜空に残り自らの全てをカントーの端に植え付ける。外来種の水で、懸命に育てた。風の強いチーバ。立派に育つわけがない。タカをくくった兎だけでなく、誰もが見向きもしなかった。
 ある日、兎の家のシャワーが突如洪水を吹き出す。
「おい鯨、止めろ! どうなってるんだ?」
 窓を開けたいが、そこまでも進めない。外に出られるのは、濁流が壁を壊す時だろう。
「満ち引きのあるものだから」
 鯨はそっとつぶやく。彼女は分かっていた。死んだオリオンがチーバからの潮流となったのだ。「それに、月に一度は来ないとあなたの悪事もばれるのよ?」
 豚に襲われ朽ちていく巨体。間もなく、港の星となるだろう。兎も、浸透圧から溶け消えゆこうとしている。脳裏をよぎるのは、直近の罪。市場でのことだった。