第50回

短編小説、ついに50回目を迎えました。
といっても、過去のものをまだ10個しか移してないけど。

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「先輩、もう止めますか?」へばっていると、国木田は上から覗き込んきた。本当に心配しているのだろう。性格もバスケの腕も、なんでも揃っているヤツだ。しかし見下されているようで、気に入らない。ヨシミツは立ち上がった。「……もう、一本」
 集合の二時間前に体育館に到着するのは、学校が休日の場合のヨシミツの習慣だった。名門校に入ったのが運の尽き。試合に出るどころか、練習さえさせてもらえない。一軍と二軍までがコートに入ることを許される。うまくなる機会は、誰もいない時。機会があるレギュラーは、一人きりの練習を邪魔しないでくれ――。もう何本目になるだろう。一年でスタメンの国木田。練習の一時間前にやって来る。ヨシミツは一対一を申し込んでいだ。
「くそっ!」うまく着いていったと思った。が、国木田は当たり前のようにシュートを決める。準備運鈍にもならないのだろう。涼しい顔。哀れむ目線。
「うわー、あれ、無様なことをしてんなー」
「バカ、おもしれーから、お前もやれって」
 だんだん集まり始めたチームメイト。自分が一本とることができるか、賭けをしている。
「もう、やめましょうよ。そろそろ監督来ますし……」
「あと少し……頼む」ヨシミツはボールを奪う。今度は自分がオフェンスの番。確かに、一本だけは決めたかった。一本とっても、トータルで負けているが――。最後の予選を前に去った親友が頭をよぎる。途中棄権……自分だって、負けを確定させる前に逃げ出した方がいいだろう。国木田の目を盗む。それだけのフェイントで抜きにかかる。
「がんばれば……の期間が限られているからな」親友は言っていた。それがスポーツ。時間内に勝ったものが勝ち。締め切りはもうすぐやってくる。最終的に負けでも、一回でも勝ちたい――。ヨシミツはトップスピードのままシュートに向かった。

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短編小説、テーマ「スポーツ」でした。
昔のものも、移さなきゃですね。