任天堂は、頭を押さえつける闘い方はもうやめたいんだろう


ソニー「任天堂はユーザを失っている。ゲーム人口を拡大するのはPSP」


東京ゲームショーPS3廉価版の値下げが発表されてから、ようやくネット界隈の空気が冷静になってきたように思える。実は先週夏休みだったため、かなりじっくりと見ていたのだが、値下げが発表された直後は「SCE、クタラギ最高」「絶対PS3買うよ」という意見が多かった。(単に劣勢の風に当てられ続けて久しいソニー派が一気に爆発したに過ぎないという見方もあるが)sそして同じ“ゲーム機”である任天堂Wiiは、対照的に「イラネ」という評判が増えているように思えた。


折しも、任天堂は数日前にWiiの値段と発売日を発表していた。どこぞの日経のような名前の証券会社のたくみな株価操作により、12月2日という発売日より25,000円という値段はあまり好意的に映らなかったようだ。2ちゃん界隈では批判的で、はてブコメントなんかではむしろこの値段は好意的に受け取られていたという逆の差違があるが、「とりあえず批判しよう」という2ちゃんと「じっくり考えて斜め上から見てやろう」というはてブコメントは、大勢の意見を計るのにどちらも真実であるように思える。どちらも世論としてありのままだ。多分これ、ネット上の意見をよく考察されている方は分かってもらえるのではないだろうか。


さて、私個人としての任天堂の発表は、値段よりも発売日に面食らっていた。12月2日というと、PS3の11月11日よりも随分と遅いのだ。ヘタすると11月初旬と12月初旬と報道されて、1ヶ月近く遅れると恣意的に見られる可能性もある(そんなむちゃくちゃな見方をするのも大抵あの辺だろうが)、そのくらい遅れて出すのだ。任天堂は「ソニーより遅れない」と言っていただけに、この差にはびっくりした。任天堂はDSの成功で、再びSFC時代のような高飛車具合に戻ってしまったんではないだろうかと心配した程だ。


これから大量に投下するであろうプロモーションに賭けているというのもあるだろう。DSのおかげで自信がついたというのもあるかも知れない。だけど、結局の所任天堂はもう、頭のおさえ付け合いで競争する事をやめてしまったというのが、本当ではないだろうか。しばらく考えてそう思った。


思えばプレイステーションセガサターン、64の頃からゲーム機に“値下げ”という概念が加わった。今回SCE側が使った手段はまさにそれであるが、これはハードの性能云々では切り札ではない。企業としては利益率が下がってしまう痛い販促活動だ。発売日を速くするというのも同様で、時間がなくなればなくなった分のことはできないという両刃の剣である。もちろん、安くなるという事は消費者にとっては最大限に魅力的なポイントであるし、早く発売できるというのも、その分お金が入ってくる期間が長くなるという企業として重大な対策だ。


だけどどうだろう? 最近、いや少なくともここ数年のゲーム業界は、あきらかにライバルを押さえつけるためにこれらの戦略を行ってきたのではないだろうか? 自社のハードの魅力を高めるというよりは、他社の製品価値が相対的に落ちるように考慮された手段“のみ”にしか見えない。先のPS2値下げの際にも「ニンテンドーDSLiteよりも安い価格で……」なんてことがのうのうとメディアに伝えられていたし、PSPの発表記者会見時の空白の時間は有名だ。敵に打ち勝つという事が大前提とはいえ、争うポイントがずれ過ぎていやしないだろうか? ライバルを貶める手法よりも、もっと力強くアピールする事をもっと優先すべきではないだろうか? いや、スーパーコンピュータ並とかじゃなくて。


任天堂の12月2日、25000円という“どっしりとした”発表は、量産体制に入った自社ハードへの「やるべきことはやった」という「覚悟」を感じた。自信というよりは決意だ。もう、SCEマイクロソフトの頭を押さえつける事は疲れてしまった。これからはその変更のしようがない製品の良さを、いかに伝えていくかに専念していくのだろう。25000円という価格が19800円になるという事は、発売前にはないと思います。(ハズれたらわらってくれ)