第146回
短編小説第146回、二回ものの後編です。
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墜落したUFOから這い出てきた宇宙人とコミュニケーションを図るために、よし子はもう一度ラジオ体操を試みた。
「さっきから何だよ?」しかし、どうやら怒らせてしまったようだ。「用件聞いてんのに、同じ事ばっかり言いやがって」
同じラジオ体操第二は、同じ言葉でしかなかったのか。
よし子は弁解しようとしたが、「俺、喋る方は大丈夫だけど、リスニングはまだなんだよね」と、断られてしまった。流暢な日本語だ。……恐ろしくて突っこめなかった。
「あんたらがウチューゴで呼ぶから来たけど、乱気流で落っこちたじゃない。どうすんのよ」
わざとではない。できるわけない。ラジオ体操でコミュニケーションだなんて。
固まったままでいると、一人の子供がまた囁いてきた。
「もう一回ラジオ体操してみれば?」
言葉ではなくラジオ体操ならば通じるというのであれば、それもアリだ。このヤク……宇宙人に通じる唯一のコミュニケーション。
しかし、体操がこのトラブルの元となっている。どうすべきか……。さっきは第二で怒らせたから、第一でやってみれば――。
「お、おおおお?」
よし子が体操を始めると、子供達も続いた。誰かがCDも回してくれた。説教臭いピアノが響いた。
「それだ。それだよ」宇宙人が感嘆の声をあげた。
いつの間にか、ケガも治ったようだ。大破したUFOも、修理ができている。資金繰りも回復したようだ!
「やっぱ、いいなあ、健康、健康!」
宇宙人は、朝日のようなさわやかな顔で帰って行った。
「家に帰ったら、二度寝しよう……」
反対に、よし子と子供達には、どんよりした倦怠感と疲れが残った。
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短編小説第146回、テーマ「体操」でした。