やっぱり鏡は見てほしい 奥村倫弘『ヤフートピックスの作り方』

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)
奥村倫弘
光文社
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デスクワークが中心で、普通にインターネットが使える会社に勤めている方ならば、きっとちらほら見かけるであろう「あいつ、いっつもヤフーニュース(ヤフートピックスは、Yahoo! JAPANのトップページに表示されるニュース部分の一番左のタブのことを正確には言います)を見ているよな」という状況。


本書は、あの「ヤフートピックス」がどのようにしてつくられているのか、その編集責任者が自ら開かすヤフートピックスの内状となっている。


私は、このヤフートピックスこそが、日本におけるYahoo!の強さそのものだと思っている。
その編集者がどのようにあのニュース群を作っているのか、そしてどうしても気になることがあったので、この本はちょうど良かった。


以下、私の個人的な偏見をベースに読書感想文が続きます。


さて、私がこのヤフートピックスに対して感じていたこと、それは

  • クリックさせるために、煽る文言にしすぎていませんか?
  • かなり主観でニュースを選別していませんか?


という2点だった。
そして、その2点の疑問は、見事この本が答えてくれている。
答えは、両方とも「YES」だ。


決して、それが悪いといっているわけではない。
けど、私は少しだけこのヤフートピックスの作り方に恐怖を覚える。


民主党はダメだ。
麻生さんを否定してはダメだ。
任天堂は儲かっているけど、SONYの方がかっこいい。
アップルはカッコいい。
けど、ジョブズは、すぐ調子に乗る。
Microsoftは、守銭奴


口うるさいおっさんや、2ちゃんねるの大勢の意見だ。
そこまで情報を追いかけている人間でなくても、ヤフートピックスがそういえば、もしくは2ちゃんで大勢がそういう意見ならば、だいたい流される。
恐怖を覚えるのは、この点についてだ。


新聞社時代と違い、さらにスポンサーによって生かされているわけでもなく、強力なY!コンテンツがそろっているヤフーにおいて、筆者は、ずいぶんと中立公正な記事が書けるようになったのかな、と思いきや、途中で「社員の○○君は、社会をよくしようと……」ということが書かれてあった。


だから、そういうのをやめてほしいんだってば。


社会をよくしようと思うのであれば、事実を伝えることに専念すべきだと思う。
上記したように、ヤフートピックスは、誰かの顔色を窺いながら、記事を載せる必要はないのだ。


煽る文言にすることは、大事なことだと思う。
筆者も述べていたように、記者が独善でプッシュした記事よりも、読者の興味は欲望と興味に素直すぎるのだ。


日本のヤフーが強いのが、ヤフートピックスのおかげだというのは、さきほど言ったとおりだが、筆者も痛感しているように、新聞社のノウハウをネットに流用したことが要因ではないはずだ。
新聞のクオリティ「が」ネットの郷に従ったからこそ、この成功はあると思う。
この本は、その苦労のあとが、精神論無しにさらっと書かれてあって、非常に好感が持てた。


新聞、雑誌、テレビが力を失いネットに集約された今、その中心となるヤフートピックスは、日本最大のニュース媒体だ。


だからこそ、ニュー速、意見の偏ったブログ、2ちゃんねるの大勢に流されることなく、事実を伝えるメディアであってほしい。
そういう要望を出したくなる本だった。


★★☆☆☆



http://blogs.yahoo.co.jp/yjtopics_blog/43210556.html