第115回
短編小説第115回となります。
今回も三回連続ものになります。
実は一回書いたけど、気にならないままファイルを喪失し、書き直したものになります。
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十五歳の誕生日を迎え、ヨウは初めてケータイを手に入れた。
まわりの友達はみんな、既にケータイを所持していて、肩身が狭かった。人気のサイトや着メロなどの話題に、着いていくことができなかった。
これでクラスの中心に戻れる。人気者に返ることができる――。
ヨウは、操作を覚えると、友達にメールをしまくった。瞼が重たくなるまで、ずっとやった。没頭していると、幼い頃を思い出した。
今まで忘れていた、微かな記憶だった――。
ヨウは幼かった。三歳か四歳、小学校にはまだ上がっていない。母親に連れられて、親戚の家を訪ねていた。
大人が話をしているだけの長く退屈な時間。
夢中になっている母親たちの隙を抜けて、ヨウは家の中を探検した。
そして仏壇のある部屋で足を止めた。仏壇と壁の隙間から漏れるわずかな光に、子供心がひどく惹きつけられた。
奥を覗いてみたい――。
隙間は小さいヨウの手がやっと入るくらいに狭い。
小さいヨウは、奥に凶暴な動物がいて、手を噛まれたりするかもしれない、と考えた。
しかし、向こうが見えないだけにワクワクは大きかった。
迷っていると、仏壇と壁の暗い隙間から、誰かが話しかけてきた。
「坊や、こっちに来たいのかい?」
その声は、今までに聞いたこともないような不思議な感じがした。恐ろしくもあり、懐かしくもあった。もちろんヨウは、その感覚を説明することはできなかった。
姿は見えない。だが、近くから聞こえてくるようでもある。
「どうしたい、坊や?」
声が再び尋ねてきた。ヨウは答えた。
「うん。そっちに行きたい」
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Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)
短編小説第115回、その一でした。
あと二回続きます。