第110回

短編小説第110回となります。
短編小説としては、本年初めての更新ですね。
今年もどうか、よろしくお願いします。
楽しんでいただけたら、さいわいです。

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「お休みの所、申し訳ないね」
「いいよ。僕はそこに長い間いたから、ある程度わかると思う。で、今どこ?」
「畑の側を歩いてる。目印は……リンゴの樹かな。たくさん植えてある」
「なんか、声が聞き取りづらいな。じゃあ、そのまま道なりに進んで」
「電波悪いかな? あ、海が見えてきた!」
「海? 海って言ったのか、今? おかしいな」
「間違ってる?」
「僕の記憶では、海なんてなかったけど」
「湖かも知れない。待って、誰かいる。道を聞いてみるよ」
「……どうだった?」
「村の名前を言われたんだけど、ちょっと聞いたことない地名だった」
「村? そんなはずはない。大きな街のはずだよ」
「いやー、寂れた寒村だよ、ここ。少なくとも都会にはほど遠いと思う」
「何だって? 地図を買った方が良いかもしれない。現在位置を確認して」
「めんどくさいよ。それに店なんて見当たらない」
「根本的に違うところにいるよ、君。乗り物を使ってダイレクトに行った方が良いよ」
「それが一番早そうだ。ちょうどそこに駅がある。あれを使おう。申し訳ない、お騒がせしました」
「ノープロブレム。どうせ、暇だからね。……そっちはもう寒い?」
「うん。先週雪が降ったよ」
「山が近いもんな。しかも日本海側」
「雪が積もらない内にこのゲームを終わらせて、次のゲームを買って来なきゃ」
「できるかな。君が今いる地区のボスは、すごく強かったからね」
「大丈夫。道に迷ってる間に、ずいぶんレベルアップしたから」

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短編小説第110回、テーマ「地理」でした。


こんな感じに、迷っている内にレベルアップできれば、ホントいいんだけど。



Photo by (c)Tomo.Yun (http://www.yunphoto.net)