本というメディアでパケらない方がいいかも 勝間和代『読書進化論』


Yahoo!ニュース(ニュースの提供元は知らんが)にも「勝間本」と報じられる始末。
はいはい。カツマー、カツマー。
勝間さんね、自分の本を売りたいからって、こんな本を書いちゃダメですよ。


……なーんて、先入観を持っていても、絶対に女史のファンになってしまうであろう内容。
読書という行為を推奨するタイトルかもしれないが、実は本好きなあなたこそが読むべき本だ。


新書ということもあり、本作は結構シンプルに力強く要点を絞った内容。
私が共感、といか取り上げたいポイントは、本というものが、

  • 疑似体験を伝えているもの
  • 推考、体系化されたコンテンツ

という点だ。


これは、すでに読書が習慣になっている人には、おおむね同意できる事ではないだろうか。


人間は、どれだけ長生きしても100年。
そして、同じ歳は、二度と経験できない。
変わっていくからこその生き物。
いろんなパターン、やり方、経験を積むには、限界があるのだ。


もちろん生まれ持って背負った運命というものもある。
私は類い稀なる運動能力をいただいてないし、あなたはマフィアのボスとして生まれていないだろう。
小説……本というものは、いろんな人間が書いている。
その経験や目線を疑似体験できるコンテンツなのだ。


しかし、それだけなら別に本じゃなくて、ゲームでもなんでもいい。
そういうストーリィが、きちんとパッケージ化してあること、推考されて、体系化されていることにも、本の強みがある。


社会人になって、習い事を始めた方には、私と同じようにこう思われた方はいないだろうか。
「独学はやはり難しい。人に教えてもらうことは、こんなにも楽なのか」
体系立って、先輩、経験者に教えてもらえることは、それこそ「知の高速道路」なのだ。


どれだけ優秀なコーチングができる人でも、ゴールを見据えてきちんと体系だって喋ってくれなければ、理解するのが難しくなる。
本は書くのに時間がかかるが、この推考という作業をくぐり抜けて、他人の人生を体験できるコンテンツなのだ。


もちろん、これでも「本じゃなくても……」という意見はあるだろう。
しかしね、人が何かを伝えようとする時に、「文章x枚数のある紙という媒体+α(挿し絵など)」というのは、結構強い。
枚数でも、紙でもないけど、メールにしろ手紙にしろ、伝えるという点において、上記の「文章x枚数のある紙……」という方法が、とてもベーシックでインパクトのある伝達手段だというのは、みなさんすでにわかっておられることだろう。


私は小説ばかり読む。
けど、この本は別にビジネス書に限った読書を推奨しているわけではない。
Amazonのレビューは、点数低いけど、年末年始におそばと一緒にニヤニヤと読んでみるのがいいだろう。


残念というか、もっと強く述べて欲しかったな、という点は、「一冊の本で劇的に人生が変わるわけではない」という点だ。
なかったわけではないが、今作が「読書進化論」ではなくて、「読書習慣論」となるくらいに、言って欲しかった。
心を静めて、さまざまな意見、価値観に触れること。
これこそが読書の最大の醍醐味であり、私がこんな歳になっても、小説好きをやめられないゆえんである。


あと、もう一つ。
本好きさんは、すでに本書で述べられていることを実感されているような気がするなーと思った。
できれば、普段本を読まない方に向けて、オーディオブックなり、他のパッケージ化をした方が、本当に読書して欲しいターゲットに届くのではないか、と思った。
それが、売れる方法かどうかは、別ですけどね。


H君よ、来年は是非勝間女史と食事をする機会を画策してみないかね?


★★★☆☆