前作の要不要に悩む、けどいらないか 村山由佳『天使の梯子』

天使の梯子 Angel's Ladder (集英社文庫)
村山 由佳
集英社
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前作『天使の卵』をはじめて読んだのは、おそらく中学3年ぐらいのころだったか。一人称の男が主人公で、かつ恋愛もので、すっごい王道もので……っていうのが、実はなかなかなくて、すごい衝撃だったのを覚えている。
あと、古文だの漢文などをこれから習う身としては、ちょっとしたセリフまわしがキザで、中二病的にはまったことを。


それだけに続編が書かれると知ったときには、「あの物語は、続編なんてやめおいたほうが……」と悩んだものだ。
以下、ちょっとネタバレしないと感想が書けそうにないので、これから近いうちに読む人は避けてください。


この物語は、いわゆる再生・回復の物語だ。
めちゃくちゃ簡単に言ってしまうとそう。
けど、やっぱり村山さんのうまいというか、真面目なところは、ドラマ仕立ての見た目で、彼女がこれまで生きてきた中での辛苦を表面に浮かび上がらせるところだ。


「そうそううまくいくものではない。だから、軽はずみなことをせずに、それでいて思いっきり生きなさい」といつも教えられている感じになる。


終盤は主人公がかすんでしまい、前作の主人公である歩太、いちばんわりをくったヒロインの妹夏姫が10年経ってようやく解放されるシーンが続く。
逝ってしまった人は、もうどこにもいないのだろうか。
すぐ側にいると言うのは、あまりにも無責任な言い方だろう。
納得には時間がかかるけど、許すまでに至ることができるのか。
そのきっかけを作ったのが、主人公ではあるんだが……。


やはり初期の作品の続編(完結編)だけあって、設定や環境の作り込みにきれいすぎる部分がある。
それが鼻につく人は、若干おもしろくないかも。


★★☆☆☆