ルールに振り回されればよかったのに。 ニール・シャスターマン『エヴァーロスト』

エヴァーロスト (ソフトバンク文庫 (シ6-1))
ニール・シャスターマン
ソフトバンククリエイティブ
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映画化決定だそうで。
親の運転する車で事故に遭い、死んでから出会うニックとアリー。
しかも、お互いを殺した同志、あの世でもこの世でもない世界で、右も左もわからないから、仕方なく協力しあうと言うところから始まる。


死後の世界を書き、かつ、少年少女をメインターゲットにしているところからなのか、かなり作り込まれた設定がある。
エヴァーロストという「死んだ子供たちがさまよう楽園」もそう。
ラストのあれの使い道もそう。
そもそもニックやアリー達『残照(アフターライト)』に何ができて、何ができないのか、というのがきちんと説明されている。
いわば、この設定をルールに物語が進んで行く。


しかし、もっと。もっとルールに振り回されても良かったんじゃないだろうか、と思った。
作者はゲームのシナリオなんかも手がけているみたいだけど、RPGなんかでルールが密接にストーリィに絡みついていると、なんとも没頭するものだ。


この作品はせっかく設定によるピンチやキャラ設定がうまくいっているのに、ストーリィはどこか、いきあたりばったりだった。
最終的には大前提、「ここは死後の世界。だけど、天国でも地獄でもない」という部分が生きているのだけど、もっと勝負事に持ち込むとか、主人公たちの行動指針に影響を与えれば、もっと面白かったのになあ、と。


ところでこの表紙。

新本格魔法少女りすか (講談社ノベルズ)
西尾 維新
講談社
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に似ている。
★☆☆☆☆