ささやかにロマンチック 『レタス・フライ』

この読書カテゴリにてとりあげる作品は、どうにも森博嗣ものが多いのはわかっているのだけど、やっぱり好みなのだからしょうがない。


レタス・フライ (講談社ノベルス)

レタス・フライ (講談社ノベルス)


短編作家としての森博嗣は、それほど好きではないという人もいるようだ。
確かに重厚長大、強大な存在を力強いトリックで振り回していくのが森博嗣。というイメージもある。
私も若干その傾向があるのだけど、この短編は文句なしに面白かった。


ネタバレにならないように触れておくと、9つからなる短編に、Vシリーズに熱中していた人は、ニヤリとしてしまうエピソードが2つほどある。(時代設定はGシリーズ)
決してそのキャラクタの名前を出さずに、そんな日、そんな夜もあったというくらいの小ささに物語をまとめている。


それゆえか、静かで、とてもやさしい読後感。
事件の内容としては、結構重大なものだったりもするのだけど、それを声高に解決へと結びつけていくような話にはしていない。
目が悪くなりそうだけど、少し部屋の照明を落として、ジャズでも聞きながら読んでほしい。
今疲れている人は、その疲れに甘えて眠ることができるくらいの、ささやかな陶酔に浸れるはず。


★★★★★