むしろ連続テレビ小説で。『刀語 第一話』
- 作者: 西尾維新,竹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/10
- メディア: 単行本
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あれほど戯言シリーズを読むふけっていた私も、もう西尾維新さんの本は読めないのではないか、と思っていた。
というのも、戯言シリーズと言うのは、(失礼だが)とても幸運にすべてがハマっていたと思うのだ。
西尾さんの文体、主人公の性格、ライトか本格派かと議論の別れる見栄えのするプロット……。
ともすれば、すべてが全く違う方向に進んでしまいがちなものが、見事一緒の穴にかちっと収まった。そういう偶然の産物、面白さだと思っていた。
そしてそれは『新本格魔法少女りすか』が自分に合わなかったことで、確信だった。
しかしさすがは西尾維新さん。この刀語では今までのイメージや築き上げてきた信頼をがらっと塗り替えている。
森博嗣さんは「読者を裏切ること」を心がけているそうだが、西尾さんはその裏切りを自分自身に向けている感じだ。
三人称の文体を通しきっているところは、ささいな変化。
わがままだった子供が、他人を思いやれるようになったように、読者の反応を想定しながら、非常に丁寧に書いていることがわかる。
そんな全体に、紛れ込んである、「らしさ」は、もうファンサービス。時々現れるやり過ぎな装飾や急に筆者が現れたようなジョークは、自分に努力を課し、なお、ずっと読んでくれている人への優しさだろう。勉強家だ。
講談社BOXのメイン企画「大河ノベル」であるらしいが、上記したような客観性と筆者のユニークな語り口調は、むしろ連続テレビ小説があっているのではないだろうか。
NHKさん、どうですかね。
★★★☆☆