なるべく本音を言わずにわかってもらおう。パーク・ライフ


パーク・ライフ (文春文庫)

パーク・ライフ (文春文庫)


短編二つが収録。
芥川賞をとったのは、タイトルにもなった「パーク・ライフ」みたいだけど、私にはもう一遍の「flowers」の方が良かったから、そちらの感想を。


クライマックスの事件までは、「果たして物語の本筋はどこだろう?」と眉をひそめる感じだったが、実はそのクライマックスの事件のために、ずーっとプロットが作り込まれていた。
「flowers」の名の通り、花の一生を作者さんは書きたかったのだと思う。


つまり、開いた瞬間だけが花ではなく、つぼみの時からしおれてしまうまで、「花」なのだ。
その、一番咲き誇る瞬間をどこに置くか、もしくは人間がどの瞬間で咲いているのか、淡々とした文体ながらも、ちょっと人間賛歌にも似た優しさを感じた。


愛した人がいる。
愛された自分がいる。
愛していた時期がある。
愛されていた時期がある。


終わってしまったことを悲しむのではなく、はじまって終わりがあるのが、この「flowers」のテーマ。


文章としては、風景情景を書き込み過ぎて、登場人物の感情が希薄になっているところもあったかな、と。
その風景描写に間接的に心情を任せるには、記述にリアリティがあって、集中できないかんじ。


★☆☆☆☆