腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫 も 48-1)
本谷 有希子
講談社 (2007/05/15)
売り上げランキング: 25946


前にSTDIO VOICEが小説特集か何かをやった時に
目に入れ、文庫落ちになるのを待っていた作品。
結果的には映画化されるタイミングで、文庫落ちしたんだけど、
期待した分のおもしろさがあった。


高橋源一郎さんが解説を寄せていて、
「絶望感」という言葉を使っていたのだけど、
確かにこの作品、結論がその描写になるように
徹底して書き込まれたような感じだ。


恋愛物でもない、群像劇かと思えば一人の半生に帰結する。
小説を読み慣れている人でも、小説を普段読んでない人でも
このプロットには戸惑うことだろう。


だが、それがいい
クラッカをかみ砕いて、その食感を味わうように、
いびつな形態がいじわるな美しさで描かれている。


文章は一瞬カッコつけているように思われるが、
客観的な皮肉さを持ち、心地よいリズム。
文学界のラップとか、そんなのじゃない。むしろ紳士。
この文章食感を味わうだけでも、
映画ではなくて小説を読むことをお勧めする。


★★★★☆