第66回

短編小説第66回です。
6月に66回。
いや、特に意味はない。

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「何でも相談所はここですか?」
 ひょっこりと雲の上に現れた顔に、神様はびっくりした。百年に一度の奇才の選定。あみだくじで当たった少年だった。聖人が生まれるか、悪魔が出現するかは、時代の運。見守っていた矢先に、本人が訪ねてきた。
「生まれてこのかた、悪いことばかりが起きるんです」少年は言った。
 人を超越する力は、雷を直撃させることで与えた。その事なら洗礼と思って我慢してほしい。君は超人へと変身済みなのだ。もう、怖いものは何もないんだよ――。
「悪いことしか起こらないとな?」神様はあいまいに頷いた。
「ええ、生きているのが不思議なくらい……へぇっくし!」少年はしゃべるとくしゃみをする。勢い余って、壁にぶつかった。
「ああ! マサミちゃんのポスターが!」張ってあったアイドルのポスター。神様の宝物を少年は破いてしまう。
「す、すみません」頭を下げた先に、十五分の一フィギュアがあった。よろけた足下に、ファンクラブのハッピ。ごめんなさいとあわせた手にプロマイド。驚愕の叫びは、一瞬でファンブログを書き換えた。
「んなわけあるか!」神様は涙ながらに叫んだ。
「いつもこうなんです。悪いことばかり起きるんです」少年は小さくなって呟く。
 このパワー、確かに百年に一度のものだ。神様は考え直した。よりによって、まわりに悪運をふりまく少年に、雷は当たってしまったのだ。
「じゃあ、これを登ってくれるかい?」神様はとてつもなく長いはしごを取り出した。さらなる上空には、ライバルの仏様がいる。あいつに押し付けよう。
「わかりました」少年ははしごを登り始めた。
 途中ではしごごと崩れ落ちてきたことは、言うまでもない。

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短編小説第66回、テーマ「竜巻」でした。
前回のテーマを日本語にしたようなものですが、
ツイスタの「た」で終わってたし、
同じようなテーマで続けるのも挑戦だし、
面白いかなと思ってやりました。


写真は、別にテーマに則してなくてもいいんですよね。
その小説に出てくるワンシーンに近ければ……。
Photo by (c)Tomo.Yun http://www.yunphoto.net