第65回

短編小説、第65回です。
テーマにあうような画像を
フリー素材集からダウンロードしてきたかったのですが、
適当なものが見つかりませんでした。

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 バババ、ズダズダシャーン。
「激しい雨が降り、お前はきっとフラれるぜえ」バスからスネア、シンバルのビートが刻まれた。
 我が目を疑った。古い8ミリビデオが出てきたと思ったら、主役は父だった。裕次郎カットとでも言うのだろうか。髪型が時代を思わせる。スティックさばきは実に軽快。なぜ天気予報をしているのか、はじめは不思議に思ったが、要はあの歌を意識しているのだ。古い上にオマージュ、インスパイア。
地震が起こり、火災を招く……」
 しかしアイドルとはかけ離れて、デスメタルのように陰鬱な歌詞だった。観客は踊り狂っている。これまた古い。どうしてこのビートで腰をくねらせるのだろう? 首を傾げた。センスのなさに、いらいらした。
「ジミンは大敗、村が頭に」よくわからない。
「二百によろこび、竜巻が襲う……」耳に気持ちのいい言葉の羅列なだけ。
「イニシャルで音楽を競うぜぇ」そういえば、九十年代にそういった盛り上がりがあった。
「ん?」
 何かおかしい。目を細める。今までの歌詞を改めて振り返った。この歌は、いや、演奏している曲全部が、予言だ。
 昔、アルバイトが忙しくなって、音楽をあきらめたと聞いたことがある。だんだん、こっちが本職になってきたというわけか。
「構造は消してぇ、改革ぅだぜぇ〜」若き父のドラムは、絶頂を迎えた。ああ、確かに嵐を呼んでいる。仕事中の父の姿を見た。
 小さい頃から、ほら吹き親父にしか見えてなかったが――。
「台風の目は、いつも、静かだぁ」
 確かに。振り回されるのは周りの方だ。強く頷いた。
 嘘つき男、嘘でも百発百中で現実になれば、教祖にもなれる。
 父は信者達を前に、静かに榊を振っていた。

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短編小説第65回、テーマ「ツイスタ」でした。