ハヤカワという時点で気づくべきだった!『小林泰三 目を擦る女』

小林泰三という作家の名前を聞いたら、「ホラー」を思いつく人が多いんじゃないだろうか。
この『目を擦る女』もタイトルと表紙だけを見れば、そんな印象がする。


目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)
小林 泰三
早川書房
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しかしね、私のリサーチ不足だった。
この人、SFファンの間でも、「わかっているヤツ」として着実に足場を固めつつあるのね。
ハヤカワから出版されている時点で、SFも得意とする作家さんだということは、想像できたことなのである。


結構軽いテイストで読ませてくれながらも、「むむっ!?」と読み返させられてしまうような深読みのアフォーダンスは健在。
その中でも、「夢」や「時代」、「地球以外の場所」といった感じに、レイヤの違う世界をテーマとして持ってきている短編集。


単なる物語として棒読みしても、それはそれでいいのだけど、一つの短編を読み終わる度に「あれがああなって、こうだから……」と振り返ってみるのをおすすめする。
いつもフザけたことしかいってない人が、実は悲しいエピソードを語っていた、みたいな感傷に浸れること請け合い。


そして、これもまた驚き。というか、すみません……。
この方、「こばやしたいぞう」ではなくて、
「こばやしやすみ」なのだよ、H君?


★★★★★