映像ではなく、匂いで表現してくれ! 『香水―ある人殺しの物語』
香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)
posted with amazlet at 08.05.18
おすすめ度の平均:
最初は我慢さすが
一気読みしてしまうフランス文学の名作。
行間から匂いがたちのぼる…
匂いそう・・・
嗚呼……、Amazonに書影がないのが残念だ。
たくさんの著名映画監督が、この作品を映像化することを
希望したそうだが、これは確かに傑作。
しかしこれは、映像ではダメだ。
匂い、嗅覚を通して語りかけてくれ。
そんな感想を持つ小説だ。
今はこうして言葉を視覚で通してこの文章をお伝えしているわけだけど、
我々には五つの感覚が備わっていることを
思い出させる。
足音によって、「あれ、○○君が近づいてくる」という
認識をするように、主人公は
匂いによってものを視るのだ。
Amazonの感想にあるように、
最初は我慢。
私も50ページ程読んでは「うーん……」と本を閉じるのを
3回ほど繰り返し、残し200ページは、
電車から降りて、家に帰るのももどかしく
途中で喫茶店によりつつ、読み切った。
しかしそれも、主人公の成長、己の能力の使い方を
わかっていく過程になぞらえているから、とも言える。
匂いでものを視ること。
ネタバレになるので、ここまでしか言えないが、
それを操れるようになったとき……。
ラストは結構あっさりしているものの、
クライマックスは、今までの「うーん……」がすべて腑に落ちる。
あっさりしたいので、なるべく香水やアクセサリの
類いを身に付けない私も、
なにか、いい匂いないかな、と考えてしまうほど。
是非一読あれ。
★★★★★